[1980年代中期の話]
「10ccが好きなら、コレ知ってる? 『ドナ』の“100cc”とファーストの違い?」 「左右のチャンネルのミックスが逆! そんなん常識じゃん!」 これを瞬時に答えられてはたまらない。一目どころか百目ぐらいはおかねばならない。 当時は、思い出したくもないくらい貧乏だったので、新譜は彼に聴かせてもらってた。 『ミステリー・ホテル』を聴いて、「10CCも終わりだね」と今なら口が避けても 言わない、神をも恐れぬ発言をしていたのも、彼の埼玉の下宿だった。 共に東京に移り住んだ後も、彼はよくアパートに遊びに来た。今は亡きUKエジソンで、 知る人ぞ知る『Graham Gouldman Thing』LP新品1万円で買う度胸を、彼は見せてい た(買ってから、かなり反省していたが…)。そこで冒頭に戻る…。 10CCの事なら知っているつもりでいた。そこに、いきなり「日本未発売曲」である。 シングルB面、アルバム未収録曲が多いのは分かっていた。でも、日本未発売…。 次のパンチは、1991年のレコード・コレクターズ8月号。例の10cc/G&C特集だ。 特に赤岩和美氏の10cc/G&Cシングルリストには、目を見張った。 15年以上「一番好きなバンドは10CC」と言い続けてきたにも関わらず、何と 知らない曲の多かったことか(アルバム未収録のシングルB面オンリーの曲だ)。 10ccのB面については「グレートボックス」でかなり補えたが、G&Cは未CD化。 自分の無知・無力を知るにつれて、絶望的な気分に陥ってしまった。 1993年、10ccが16年ぶりに来日した。コンサートの客の入りはイマイチだったものの、 中古屋で、にわか10ccリバイバルが巻き起こった。しかも、かなりお値打ち価格で。 それまで「買わなくてもいいや」と思っていた日本盤も「まあいいか」と買いまくった。 だが問題の『アルバム未収録曲』は、国内未発売シングルがほとんどだ。 90年代に入り、中古輸入盤を売る店が増えたとはいえ、シングル盤の入荷は少ない。 仕事場の近くにあった「パーフェクト・サークル」(現在は移転)で、イギリス盤と オランダ盤の中古シングルを何枚か見つけたものの、音源完全制覇は「夢のまた夢」。 ……だが、それが夢でなくなる日がやってきた。 1997年4月末、ついに私はインターネットの世界で漂流を始めたのである。 |